蕎麦好きの独り言(2015.06.01up)

その弐拾「天網恢々」


田植えの終わった我が家の水田

つい二週間前には田植えをしていたと言うのに季節は一気に夏に向かっております。
庄内地方は暑い日が続いており風も強くそれも大嫌いな東風で田んぼの稲も苦しそうにもがいています。
今回は蕎麦とは無関係な話で申し訳ございませんが、お付き合い願えれば幸甚でございます。

田んぼと言えば最近は色々な栽培方法があり庄内でも取り入れられておりますが、目立って増えたのが直播きの田んぼ、また数は少ないですがアイガモ農法を実践している農家もございます。

無農薬栽培と言えば聞こえはよいですが、やる方にしてみたらとんでもない労力を必要とします。
また消費者にとってはとても魅力的に聞こえるフレーズのようで、こだわる人達がいるのも事実、某国産の農産物を閉め出すなんてことをやった国が、そのしっぺ返しをされると言った負の連鎖状態に陥ることもしばしば、まああまり過敏になる必要などないように思うのは筆者だけではありますまい。
何事にもそれなりの程度というものがございますから…

誤解なきように申し上げますが、無農薬を否定している訳ではございません。食生活なんてものはあくまでも個人の自由ですから、何をどのように食べようが誰も批判する権利などありません。好きなものを好きなように食べる事は非常に喜ばしいことであります。
でも一つだけ…
「農薬を使用していない作物は安全で、使用しているものは身体に悪い」
と言うのはデマですから。
そんなのは少しその気になって調べれば今の時代すぐに判りますよ。


その辺の田んぼを見ながら歩くと色んな栽培方法が見られますが、暇なので(笑)写真に撮ってきました。




これが乾田直播き、文字通り乾いてますね。
これから田んぼに水を張りますが、耕起、代掻き、育苗管理の手間を省けます。
秋にプラウ耕してレベラーで高低均し後に専用の播種機で種を蒔きます。




こっちが親戚とうそぶく某農機具メーカーが推奨する直播きです。
従来通り耕起、代掻きを行いコーティングした種子を専用の田植機で蒔きます。
育苗の手間がいりませんね。



  

これが無農薬で有名なアイガモ農法です。
田んぼをぐるりとネットで囲いアイガモの雛を放します。雛たちは水の張られた稲の条間を泳ぎながら雑草の芽を食べてしまうと言う究極のほったらかし農法です(笑)
稲の生長と共に雛も大きくなりますがアイガモ達の末路は残念ながら知りません。
鴨南蛮の材料となるような噂もございますが…(汗)




こちらは田植え時に真っ黒な紙のシートを敷ながら植えたもの。
黒いシートが遮光するため雑草が芽を出さないと言う理屈のようです。
専用の田植機が要るみたいですね。



  

二枚の写真を見比べると違いが分かると思いますが…
稲の株と株の間隔が違いますね。
左側が多分、坪あたり70株で植えてありますが、右の方は37株の疎植栽培でしょうね。
これは株間が縦横共に30cm間隔で植える方法ですが、大昔の手植えの時代にはこの間隔で植えていた筈でございます。

オラみたいな素人の考えでは密に植えた方が収量が多そうに思うのですが…
だって約半分しか苗を植えないんですよ。お歳を召した方達にはなかなか受け入れがたい技術のようですね(笑)
でも最近の研究では慣行栽培と収量は変わらないみたいですが…





光陰矢の如し、技術の革新というのは世の東西を問わず着実に行われているもので、こと農業分野に関しても頭の固い偏屈な筆者のような、ぐうたらオヤジにはついて行けないものがありまする。しかしながら普遍的な部分もあるのは事実で、元来農業とは自然と対話しながら綿々と行われてきたものであります。莫大な資金をつぎ込み新しい技術を導入すれば、とても美味しくて安全な作物が大量に安価に収穫できるのかと言う疑問はなかなか払拭できません。
上述の技術もそれなりの出費をば覚悟しないといけないものと存じます。


大規模農業も片手間農業も共通する部分も多いはず、現実的な問題として我々が直面していること、それは共同作業です。
田植えが一段落すると盛夏にかけて雑草との格闘が始まります。いや敵ながら敬服に価するバイタリティーをお持ちの植物であります。


中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本が参加するか否かの問題で、我が国の財務大臣は不参加を表明しましたが、国内でも反対意見も見られます。これは国民性の違いもありましょうが、我が国の基本的思想が多くの参加国と差があると言うことでしょう。
大臣の発言にもありましたが、「今は世界で借りたお金を約定通り返さない方が多い」と言う疑念を払拭する材料が、何処を見渡しても得られなかったと言うことのようです。

まあ仮に出資したところで主導する国家が自国に有利なインフラを率先して整備することは明白ですので、我が国の国益に添うかなんてことは誰が考えても分かります。
インフラとはそう言うもので個人的な利益にのみ供するものではありません。
話を転じて農家にも当然インフラは存在します。言葉を返せば農業とは国益なのですから当然公金をもってインフラを整備してきたわけであります。で、それらを直接管理、維持してきたのは残念ながら政府ではありません。農家が共同作業で行ってきた度合いが多いと思います。

例えば田んぼの用水路や排水路や農道の維持管理、これには細やかな人の手が掛かります。
最近の国道なんてのは路肩をコンクリート等で固めて、雑草が生えないようにしております。(それでも雑草は生えますがね…)
圃場周辺に生える全ての雑草をこの手法で対応するのは現実的に無理ですから、施設を利用している農家の方全てがそれなりの負担をして対応しているのであります。
昔から代々それは集落単位で割り振られてきましたが、大規模化、集約化が現実的になってきた今日この頃では困難になってきました。つまりは人手が足りなくなってきたのでありまする。
所変わればですが、作業に当たり筆者の周辺では、大も小も一軒当たり一人と言う考え方のようであります。

最近これらの施設も老朽化と性能面も含めて更新する時期にあることは、お国の方々も分かる人はいるみたいで事業として予算化してる物件もあるみたいですが、当面(オラが百姓をしている間くらい)は現状維持でしょうから問題は深刻なのであります。
昔は農家の数も多くGHQのおかげで耕作面積もそんなに個人差はなかった為、それなりに上手くやってこられたのでありますが、集約化大規模化は否が応でも個人に集中してしまいます。片手間農家の大半は止めてしまいますが、筆者のようにしぶとく(雑草のように(笑))残っている人もいるわけでありますから、色々問題が出てくる訳でございます。

傍から見れば大規模農家が全てやれば良いんじゃないか、なんて考える方もいらっしゃるでしょうが、つまりは会社組織として人を雇ったりアウトソースしたり…
まあ、いつかはそうなるのでしょうが、結果的にそれらの費用は消費者が否応なく払うことになると気付いている方々は少ないと存じます。
つまり共同作業と申しますのは市場価格から見たらとんでもなく安い価格で行われていることを世間の皆様はご存じないということであります。そしてそれらの費用は現実的には消費者に直接的に転嫁されておらず、農家の負担で行われている訳であります。

日の丸を背負ったお役所の方々は十分にそのことは分かっているのでございますが、いわゆる「知らんぷり」を決め込んで波風が立たないよう用心しておる次第であります。
国家権力の執行者の権限が強大なよその国では、自国民が何を考え、何をしようとしているのかを探る手立てが発達し、良からぬ特権意識を持つ者もおられるようで、四六時中目を光らせているようでございますが、我が国ではそのようなことなど先の大戦をもって終焉したものとの認識がございます。

先日早朝からの共同作業がございまして大汗を流しました。良い社会貢献をしたなと自己満足の喜びに浸っておりましたが、一息ついた後に軽トラに草刈り道具一式積み込んで家を出ようとしたところ、いつも通る道を近所のご婦人の車が原因で小渋滞が発生しておりました。
実はこのご婦人、ご高齢のためか傍から見ていても運転が覚束無い状態にありまして、密かに心配しているのであります。しかしながら嘘偽りなく国家のお墨付きをもってして、自車を移動しておりますことに、筆者のような偏屈者がどうこう言う筋合いではございません。

そう言う勝手な事情がありまして、回り道の方が早いと瞬時に判断し、ハンドルをいつもとは逆に切りまして自宅を出発しました。行き先は2分も掛からないビニールハウスなので特段急ぐ必要もありませんから、ゆっくり(15km/h)運転して十字路を右折しました。
ふと見るとそこには一台の高級車が停車しておりまして、こちらが優先道路ですので一時停止しているんだなと思いまして、気にもとめず相変わらずトロトロと目的地を目指しておりました。

それでも運転する時は四六時中周りを確認する質なので、ルームミラーで後方確認しました時に、かの高級車が発進して行くのが見えました。と同時に交差点で勢いよく方向変換したと思ったら、ルーフからお祭りのように賑やかな灯火を点滅させながら出し、勢いよく追って来るではありませんか。

「あ゛…」

賢明な読者の皆様には、ことの顛末がお判りのことと存じます。


我が政府のご親切な従業員の方が仰ってました。

そうです。

壁に耳あり障子に目あり、自分の身は自分で守ること。

とても大事なことだと認識を新たにしたところでございます。

そして何が起こるかなんて誰も知らないこと、「運」という千古不朽の不条理な世界が燦然と存在することも、改めて思い知らされた次第でございます。


やれやれ…